発酵と腐敗

発酵

森の土

大きな発熱を伴うことなく有機物は土に接する辺りからゆっくりと分解して行く。 発酵分解により、アミノ酸・有機酸・糖類等の

腐敗

堆肥

発熱を伴い急激に有機物は分解して行く、 その時悪臭を放ち、アンモニア・硫化水素・メタンガス・メチルカブタン等の有害物質を放出する。

発酵分解は発酵菌(麹菌・乳酸菌・酵母菌等)が働き腐敗は腐敗菌(フザリュウム等)が優勢に働いた結果である。 どちらが優勢に働くかは有機物の質やその場の環境による様です。しかし自然に不必要な物は何一つ無く、腐敗の系も必要なのです。 自然状態で土のC/N比は10程度であり窒素分の多い有機物が投入されると急激な無機化によりC/N比を保とうとします。その時に腐敗の系が働きます。

C/N比

C/N比とは有機物に含まれる炭素と窒素の比率で炭素の割合が多いほどC/N比(炭素率)が大きいという。 肉などの炭素率が小さいものは腐敗菌が優勢に働き易く、悪臭を放って腐って行く。芋や大豆などのでんぷん質が多くて炭素率の大きいものは同じ腐っていくように見えても発酵菌が優勢に働いており酒や味噌のような発酵臭がしてくる。若い青草も積み上げたまま放置しておくと異臭を放って腐敗して行くが森の落ち葉は枝から落ちる時点で炭素率は大きくなっており、落ちてからも茶色く枯れて窒素分を取り除いている。 その為降り積もった落ち葉は腐敗することなく静に発酵して行く。

水や空気

枯れ葉や枯草も水の中に浸しておくと異臭を放って腐敗して行くし蛆虫が湧くことも有る。水分によって酸素の供給がたたれているからだろう。森の落ち葉を掻き分けるとそこにはさまざまな虫達が生活している。彼らが生活出来るのはそこに空気の流れが十分に確保されていからだろう。良く発酵した堆肥を作るときに切り返し作業が必要なのも酸素を供給して腐敗させない為だ。腐敗して出来た堆肥を畑に施すと病害虫が発生しやすいと良く言われる。人間にとって不都合なものは畑やそこで育つ作物にとっても不都合なのだ。 ※発酵には酸素を必要としない(嫌気性)発酵もあるが、森の落ち葉の様に上から供給される有機物はまず酸素を必要とする(好気性)発酵によるところのものが多いと思う。どちらも必要である。

糸状菌

畝の敷き草をめくると、糸状菌(カビや茸菌)が繁殖しているのが見られます。地表の有機物は糸状菌による生命化から始まります。森林や草原がそうであるように。 糸状菌にも病原菌にあたる菌も沢山いますが、全てを生かす多様性のほうが大切だと思います。 ここから作物にとって人にとって好ましい状態になれば、これはまさしく発酵の入り口となります。

思う

こんな話を聞いたことが有る・・・野生の動物が足に怪我をしたとき、その足を土の中にうずめて傷が癒えるのを待つと言う話。・・・医療現場で傷口に消毒液を使用せず清水による洗浄のほうが傷口の回復が早いと言う話。・・・知り合いの話であるが、大病院で手の施し様が無いといわれたガン患者が知り合いの医者に試してみるかと言われて自分の畑に毎日何時間か体を埋めることを繰り返して介抱に向かった話。 有機栽培農家の人が、土の良し悪しを味で確かめる映像をテレビで見たが、人間にとって親和性の有る微生物の優勢な土は、植物にとっても好ましい土だと言うことなのだろう。 こんな事を連想する。プールの水に塩を入れ、たとえば5%の濃度だったとする、そこに限界まで塩を溶かした水の入ったコップを静にプールに静める。すると間もなくコップの水の塩分濃度も5%になるだろう。圧倒的な水の量とは畑の土の圧倒的な微生物量であり、5%に当たる比率は存在する微生物の種類のバランスではないか。 好ましいバランスの取れた微生物群の活発な活動が奇跡と思われる様な現象を引き起こしているのだと思う。自然は常に多種多様な生物の繁栄の為に理想的なバランスを保ちながら、大きな命の歯車を回している。 人間の役割は、そのバランスを狂わすことなく大きな命の歯車を回す一員になることではないだろうか。人間に任された、大きな歯車に組み込まれた小さな歯車が有るという事なのかもしれない。